最近、半導体関連株の値動きが少し気になっています。これまで相場を引っ張ってきたAI・半導体関連株が売られる一方で、商社や金融株など、別の業種が買われる場面も見られるようになりました。
昨日も、日経平均が大きく下落したにもかかわらず、東証プライム市場では値上がり銘柄の方が多いという、少し不思議な相場でした。株式市場全体から資金が逃げているというより、半導体などの一部から別の業種へ資金が移っている可能性もありそうです。
ただ、個人的にはAI・半導体ブームそのものは、もう少し続くのではないかと思っています。そこで今回は、半導体業界に特有の「シリコンサイクル」から、今回の好況がいつ始まり、いつまで続く可能性があるのかを考えてみます。
シリコンサイクルは何年周期なのか?
半導体業界には、需要増を受けて設備投資が拡大し、やがて供給過剰や在庫調整が起こり、その後また回復するという「シリコンサイクル」があります。パソコンやスマートフォン向けの需要、特にメモリー半導体の価格などに表れやすい動きです。
一般には3〜5年程度、目安として約4年と言われています。過去の世界半導体売上高の前年比成長率を調べた分析では、ピークから次のピークまで平均約45か月、底から次の底まで平均約40か月とされています。
ただし、これは売上高の「前年比成長率」に関する周期です。売上高そのものや半導体関連株の株価が4年ごとに天井をつける、という意味ではありません。
今回の好況はいつ始まったのか?
今回のサイクルを振り返ると、2023年が一つの底だったと考えられます。世界半導体市場は2022年の約5,741億ドルから、2023年には約5,269億ドルへ縮小しました。パソコン・スマートフォン需要の低迷や在庫調整などが重なった時期です。
その後、2024年には市場規模が約6,279億ドルへ回復しました。背景には生成AIの普及に伴うデータセンター向け半導体の需要拡大もあります。AI向けGPUやHBM(高帯域幅メモリー)への関心も高まりました。
2023年を不況の底、2024年を回復開始の年と捉えると、2026年10月現在は回復が始まってからおよそ2年半〜3年が経過しています。従来の周期を考えると、そろそろ調整を意識しても不思議ではない時期です。
過去の約4年周期だけなら、すでに調整局面でもおかしくない
過去の分析では、半導体売上高の前年比成長率は2023年2月頃に底をつけたとされています。仮に底から次の底までの平均40か月をそのまま当てはめると、次の底は2026年6月頃という計算になります。
しかし、実際の市場ではAI向けの需要が引き続き半導体業界を支えています。今回は従来の平均的な周期がそのまま当てはまらない可能性があるわけです。
もっとも、平均から外れたからといって、シリコンサイクル自体がなくなったわけではありません。これまでとは違う需要が加わり、周期の長さや業種ごとのタイミングが変化している、と考える方が自然かもしれません。
AI需要で「スーパーサイクル」になるのか?
従来の半導体需要は、パソコンやスマートフォンの販売動向に大きく左右されてきました。一方、AI向け半導体は、大規模なモデルの学習だけでなく、サービスの利用が広がれば推論処理にも必要になります。
さらにGPUだけでなく、HBM、通信、データセンター関連の半導体など、需要の裾野も広がっています。そのため、従来の周期より長い「スーパーサイクル」になるのではないかという見方もあるようです。
個人的にもAIの利用が今後さらに広がることを考えると、半導体需要が急になくなるとは思えません。ただし、過去にも長期的な成長を期待されながら、その途中で供給過剰や価格下落が起きた例があります。長期的に需要が増えることと、途中で不況が来ないことは別でしょう。
好況の終わりはいつ頃になりそうか
2026年:需要の強さが続くか
AI向けの設備投資や半導体の需要が今のところ市場を支えています。現時点で業界全体がただちに深刻な不況へ転じると決めつけるのは早そうです。ただし、株価が先に調整することは十分あり得ます。
2027年:成長率の鈍化に注意
AI関連の投資が続けば市場拡大も続く可能性があります。一方、それまでの伸びが大きければ、成長率が鈍化することもあるでしょう。成長率が落ちることと、売上高そのものが減ることは違います。業績が伸びていても、投資家の期待を下回れば株価は下がり得ます。
2028年以降:設備投資の反動も意識
現在の旺盛な需要を見込んで生産能力を増やした結果、数年後に需要の伸びが鈍化すれば供給過剰につながる可能性があります。私としては2027〜2028年頃から、需要と生産能力のバランスを特に注意して見たいと思います。もちろん、2028年に不況が来ると断定できるものではありません。
半導体株が下がる一方で、資金はどこへ向かうのか
ここまで考えると、最近の半導体株の下落も別の見方ができそうです。AI需要が強く、企業の業績が好調でも、株価には将来の期待が先回りして織り込まれています。期待が高すぎれば、良い決算であっても株価が下がることがあります。
半導体株の上昇が長く続いたところで利益確定が進み、その資金が商社・金融・電力など、これまで相対的に注目されにくかった業種へ向かう可能性もあります。昨日のように指数は下がっても値上がり銘柄が多い相場は、そんな資金循環を考えるきっかけになります。
ただし、1日の値動きだけで資金移動が起きたと断定はできません。今後も同様の傾向が続くのかを見たいところです。
半導体株を今から買うべきなのか?
私はAI・半導体ブーム自体はもう少し続くのではないかと考えています。ただ、だからといって半導体株を今すぐ買い増すべきかは難しいところです。業界の成長が続いても、株価がすでに大きな期待を織り込んでいれば、投資のタイミングとしては慎重になりたいです。
最近は以前から気になっている電力株など、半導体以外の業種にも目を向けています。とはいえ、資金が移っているように見えるからといって慌てて追いかけるのも違う気がします。業界の成長性と株価の割安さは、分けて考えたいですね。
個人的には、そろそろパソコンを買い替えたい
ここまで半導体市場や株価について考えてきましたが、株式市場とは別に、実は個人的には半導体の価格がもう少し落ち着いてほしいという気持ちもあります。
今使っているパソコンは購入から5年以上が経っており、そろそろ買い替えを考えています。最近はローカルLLMにも興味があるので、次に買うなら自分のパソコンである程度のAIモデルを動かせるスペックが欲しいところです。そうなると、やはり気になるのがGPUやメモリーの性能と価格です。
AIブームによって半導体の需要が増えることは関連企業にとって好材料ですが、買う側としては高性能なPCパーツが高いのは困った話です。もちろん、半導体市場が不況になっても、GPUやパソコンがすぐに安くなるとは限りません。為替や製品ごとの需給にも左右されます。
それでも、将来的に供給が増え、価格競争が進めば、今より高性能なパソコンを手頃な価格で買えるかもしれません。投資家としては半導体の好況が続いてほしい一方、消費者としては少し安くなってほしい。なんとも複雑な気持ちです。
まとめ:AIブームの継続と株価の上昇は別問題
シリコンサイクルは過去におおむね3〜5年程度の周期で好況と不況を繰り返してきました。今回の市場回復は2024年頃から始まり、従来の周期なら調整を意識してもおかしくない時期に入っています。
それでも、AI需要という新たな成長要因によって、市場の拡大が長引く可能性はあります。個人的には2027年頃まで好況が続く余地もあると思いますが、設備投資の反動や供給過剰には注意したいです。
何よりAI・半導体ブームが続くことと、半導体株が上がり続けることは別問題。最近の相場を見ていると、この違いを意識することが大切なのかもしれません。
※この記事は個人的な相場観をまとめたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
参考資料
世界半導体市場の統計:WSTS(世界半導体市場統計)。シリコンサイクルの過去の周期:第一ライフ資産運用経済研究所の分析。設備投資の見通し:SEMI。半導体産業の動向:JETRO。

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